別所 実正Crafts List
別所実正の特徴とこだわり
昔も今も、手仕事だからこその味がある
機械製作が主流になっている兜鉢などのパーツや小さな金具も、実正は全て手仕事で作り上げています。 真っ直ぐすぎないちょっとした歪みも、兜が使われていた当時の雰囲気や手仕事ならではの味を出してくれます。 また、当時の兜の作り方は、文献としてほとんど残っていません。 博物館に足を運び、実際の兜を目で見て研究を重ね、どのように作られているか考えた上で作られています。東京浅草に生まれ、甲冑製作に従事。平安時代から江戸末期までの甲冑、刀剣の研究に専念し、彫金切りまわし、鍛金等の技法を用いて甲冑の製作に取り組んでいる。コンパクトタイプの伊達政宗公兜を発表するなど、昔ながらの技術を生かしながら現代の生活にも適したクオリティの高い兜を製作している。
兜作りで苦労される点やこだわりはありますか?
兜作りには非常に多くの製作工程があります。全行程を数えたことはありませんが、頭の部分である鉢だけでも62枚叩き直ししなければならないので、一点作るのに金槌で何百回も叩くような作業です。
ただただ「良い品物を作るんだ」という気持ちでやっています。
中でもこだわっているのは「鍬形台(くわがただい)」という部分です。兜というのは平安時代よりももっと前に登場したものなのですが、兜の装飾である「前立(まえだて)」の下の部分にあたるのが「鍬形台」です。
これは、兜の役割りとして必ずしも必要なものではないのですが、その当時のトップの人だけが身に着けられるものだったんです。
ですから、そこには彫刻など諸々最高なものが付いています。当時、その兜をかぶって戦争へ行っていた訳ですから、そこには何か信念のようなものが込められていたはず。
私はそこに魅力を感じています。
彫金・鍛金の技術が際立つきめ細やかな鍬形台
根っからの職人だった父を追いかけて磨いた、彫金・鍛金の技術。
まるでアクセサリーのような、レースのような繊細さは、実正だからこそ表現できる美しさです。兜にとって一番の顔となり、武将の誇りや信念を表す鍬形台に魅力を感じ、特にこだわっています。。
膨大な研究を重ね、節句人形の業界人と交流を重ねながら、日々新しい甲冑を生み出しています。
製作に込める信念
兜は五月人形として節句をお祝いするため。男の子が立派な男に育つようにと作っています。
ただ、私は商売っ気がありませんので、「どうやって売ろうか」というより「良い品物を作ること」を第一にしています。一生懸命作って完成するとそれでおしまいです。
「その次はもっと良い品物を作ろう」と気持ちを改めて次の作品に向き合います。そのため、これがいくつ売れたというのは考えていません。